グループ活動が苦手な生徒も安心!具体的な声かけと役割分担の工夫事例
はじめに:グループ活動で生徒を「置いてけぼり」にしないために
授業で話し合いや共同での作業を取り入れる機会は多いかと思います。生徒たちが協力して一つの目標に向かうグループ活動は、学びを深めたり、多様な考えに触れたりする貴重な機会です。一方で、「うちのクラスにはグループ活動が苦手な生徒がいて、どうサポートしたらいいだろう」「いつも一部の生徒に任せきりになってしまう」といった悩みをお持ちの先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、コミュニケーションに戸惑いを感じやすい生徒、自分の考えを言葉にするのが難しい生徒、集団のなかでどう動けばいいか分からない生徒など、多様な生徒が安心してグループに参加し、それぞれの形で貢献できるような配慮は欠かせません。
この記事では、グループ活動に苦手意識を持つ生徒への具体的な声かけや、役割分担を工夫するアイデア、そして教員ができるサポートについて、事例を交えながらご紹介します。
なぜグループ活動が苦手?生徒の背景にある「つまずき」を理解する
生徒がグループ活動に対して苦手意識を持つ背景には、様々な要因が考えられます。これらの要因を理解することが、適切なサポートの第一歩となります。
- コミュニケーションの難しさ: 他の人の話を聞き取るのが難しい、自分の考えをうまく言葉にできない、非言語的なサイン(表情や声のトーン)の読み取りが苦手、など。
- 役割や手順の理解困難: グループの中で自分が何をすれば良いのか分からない、活動全体の流れが見通せず不安になる、指示が抽象的すぎて理解できない、など。
- 集団への不安やプレッシャー: 大勢の前で話すことへの強い抵抗、失敗を恐れる気持ち、周りの意見に合わせすぎる、逆に自分の意見を押し通そうとする、など。
- 感覚過敏や特性によるもの: 周囲の雑音が気になって集中できない(聴覚過敏)、人の動きが気になってしまう(視覚優位)、特定の物事へのこだわりが強い、など。
これらの背景をすべて把握することは難しいですが、「なぜこの生徒はグループ活動でつまずきやすいのだろうか」と想像力を働かせ、多様な背景があることを理解しておくことが大切です。
具体的な支援アイデア:グループ活動を「安心できる場」にするための工夫
生徒一人ひとりがグループ活動に参加しやすくなるために、教員ができる具体的な工夫をいくつかご紹介します。
1. グループ編成への配慮
単に席順でグループを作るだけでなく、活動の目的や生徒の特性を考慮して意図的にグループ編成を行うことも有効です。
- 安心できるメンバー構成: 苦手な生徒の近くに、落ち着いて話を聞いてくれる生徒や、丁寧に説明してくれる生徒を配置するなど。
- 得意なことを活かせる組み合わせ: リーダーシップを発揮したい生徒、書くのが得意な生徒、絵を描くのが得意な生徒などを組み合わせる。
- 少人数でのスタート: グループ活動に慣れていない場合や、集団が苦手な生徒が多い場合は、まずは2人組や3人組など少人数から始める。
2. 事前の準備と見通しの共有
活動の開始前に、目的や手順、個々の役割を明確に伝えることで、生徒は見通しを持って安心して取り組めます。
- 活動のねらいを具体的に示す: 「〇〇について、自分の考えを3つ出し合い、グループで1つにまとめましょう」など、具体的な目標を提示します。
- 活動手順を視覚的に提示: ホワイトボードやプリントに、「①個人の考えを出す(5分)→ ②グループで共有する(10分)→ ③意見をまとめる(10分)→ ④発表準備(5分)」のように、ステップと時間配分を書き出します。
- 役割の具体例を提示: 「書記」「タイムキーパー」「発表者」「アイデア出し」「まとめ役」など、考えられる役割のリストを示し、それぞれの役割が具体的に何をやるのかを簡単に説明します。
3. 役割分担の具体的な提示とサポート
特にグループ活動が苦手な生徒にとって、「何をすればいいか分からない」が一番の不安要素です。具体的な役割を提示し、サポートすることが重要です。
- タスクを細分化して提示: 「調べる」という役割なら、「図書館で資料を探す」「インターネットでキーワードを検索する」「本から必要な部分を書き写す」のように、具体的な行動レベルに落とし込んで示します。
- 「得意なこと」「できそうなこと」を活かせる役割を提案: 絵を描くのが好きな生徒に「ポスター係」、文字を書くのが苦手でも話すのが得意な生徒に「発表係」、皆をまとめるのは苦手だが一人でコツコツ作業するのが得意な生徒に「資料収集係」など。
- 役割テンプレートの活用: グループで話し合うべき項目、決定事項を記入するシンプルなテンプレートを用意しておくと、書記などの役割の生徒が活動しやすくなります。
- 教員からの声かけによる役割付与: グループの様子を見て、「〇〇さん、〜の役割をお願いしてもいいかな?」「この部分、◇◇さんにまとめてもらおうか」など、教員から具体的な役割を促す声かけをします。
4. 活動中の具体的な声かけと見守り
活動中に教員が見守り、困っている生徒やグループに適切な声かけをすることが、生徒の安心感につながります。
- 肯定的な声かけ: 「みんなで協力できているね」「〇〇さん、しっかり話を聞けているね」「そのアイデアいいね!」など、プロセスや努力を認めます。
- 困り感への気づきと声かけ: 表情が硬い、手持ち無沙汰にしている、会話に入れないでいる生徒に気づいたら、「何か困っていることはない?」「今、どんな状況かな?」と優しく声をかけます。
- 具体的な指示やヒントの提供: 「〇〇さん、その資料のこの部分がヒントになるかもしれないよ」「□□の役割の人は、△△について考えてみよう」など、次の一歩につながる具体的な指示を与えます。
- グループ間の交流促進: うまくいっているグループの様子を他のグループに紹介したり、困っているグループにヒントを与えたりします。
5. アウトプット形式の多様化
発表だけでなく、レポート作成、ポスター、プレゼン資料、動画など、様々な形式でのアウトプットを認めることで、生徒は自分の得意な方法で成果を示すことができます。書くことが苦手な生徒も、話すことや絵を描くことで貢献できるようになります。
教員の悩み解決策:焦らず、小さく試すことから
「これだけ多様な生徒がいる中で、全員に目を行き届かせるのは難しい」「時間がない」といった悩みもあるかと思います。完璧を目指すのではなく、まずは小さく試せることから始めてみましょう。
- 特定のグループや生徒に絞って試す: 全クラス、全グループで一度に変えるのは大変です。まずは特定のクラスや、特に支援が必要そうなグループで今回ご紹介したアイデアを試してみる。
- 生徒自身にグループ活動での困り感を聞いてみる: 個別面談や簡単なアンケートで、「グループ活動でどんな時に困る?」「どんな役割なら取り組みやすい?」など、生徒の声を直接聞くことも貴重なヒントになります。
- 他の先生に相談する: 同じ学年や教科の先生、特別支援コーディネーターの先生に相談し、アイデアをもらったり、悩みを共有したりすることで、一人で抱え込まずに取り組めます。この「学びのカタチ共有広場」を活用することも有効です。
まとめ:一人ひとりの「できる」をグループで活かす
グループ活動は、すべての生徒にとって居心地が良く、学びになる場所であるべきです。今回ご紹介したような具体的な声かけや役割分担の工夫は、特別なことではなく、日々の授業の中で少しずつ取り入れられるものです。
多様な学習スタイルを持つ生徒が「自分もグループに貢献できた」「みんなと一緒に学べて楽しかった」と感じられるような体験を一つでも多く積み重ねられるよう、私たち教員も試行錯誤を重ねていきたいと思います。
この記事で紹介したアイデアが、先生方の明日からの授業づくりのヒントになれば幸いです。