生徒自身で調べる力を育む!スモールステップで教える「調べ学習の進め方」
調べ学習、生徒はどこでつまずく?先生ができるスモールステップ支援
中学校の学習活動において、調べ学習は生徒が主体的に学びを進め、情報を活用する力を育む重要な機会です。しかし、「何から始めればいいか分からない」「どうやって調べたらいいの?」「集めた情報がまとまらない」など、調べ学習に対して苦手意識を持ったり、どこでつまずいているのか分からず立ち止まってしまったりする生徒も少なくありません。
特に多様な学習スタイルを持つ生徒にとって、調べ学習の全体像を捉えたり、手順通りに進めたりすることは難しい場合があります。教員として、生徒が「分からない」と感じているポイントを見つけ出し、そこに対して具体的なスモールステップでの支援を行うことが大切です。
この記事では、調べ学習の一般的なステップを確認し、それぞれのステップで生徒がつまずきやすい点と、それに対する具体的な支援アイデアをご紹介します。すぐに授業で試せる方法を交えながら解説しますので、ぜひ日々の指導にお役立てください。
調べ学習の一般的なステップとつまずきやすいポイント
まず、調べ学習を大きく4つのステップに分けて考えてみましょう。
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テーマ設定・問いの設定:
- 「何について調べたいか」を決め、「どんな問いを立てるか」を明確にするステップです。
- つまずきやすいポイント:
- 興味のあるテーマが見つからない。
- テーマが漠然としすぎている、または狭すぎる。
- 調べられる「問い」の形にできない。
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情報収集:
- 設定した問いに答えるために、必要な情報を集めるステップです。
- つまずきやすいポイント:
- どこで情報を集めれば良いか分からない(本?インターネット?)。
- インターネットでの検索方法が分からない(どんなキーワードを入れる?)。
- 信頼できる情報とそうでない情報の区別がつかない。
- 集めた情報が多すぎる、または少なすぎる。
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情報の整理・分析:
- 集めた情報を読み解き、必要な情報を選び、分類・整理するステップです。
- つまずきやすいポイント:
- 集めた情報を読んでも内容が理解できない。
- 情報のどこが重要か判断できない。
- 情報を分類したり、関連付けたりするのが難しい。
- 集めた情報を書き写すだけで終わってしまう。
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まとめ・表現:
- 整理・分析した情報をもとに、自分の考えや調べたことをまとめ、発表する形にするステップです。
- つまずきやすいポイント:
- どういう構成で書けば・話せば良いか分からない。
- 自分の言葉でまとめるのが難しい(写してしまう)。
- 発表ツール(ポスター、スライド等)の使い方が分からない。
- 時間内にまとめきれない。
ステップ別!生徒への具体的なスモールステップ支援アイデア
それぞれのステップで生徒が「分からない」と感じている部分に焦点を当て、具体的な支援方法を提示することが効果的です。
ステップ1:テーマ設定・問いの設定への支援
- 興味関心を引き出す:
- 漠然と「好きなこと調べてみよう」ではなく、教科書や最近のニュース、身近な出来事などから具体例をいくつか示し、「この中で気になることはある?」と選択肢を与えてみましょう。
- 視覚的に訴える(写真、短い動画など)ことで、興味のきっかけになる生徒もいます。
- テーマを具体的にする:
- 生徒の「〇〇について調べたい」という希望を聞いたら、「その〇〇の何を知りたい?」「〇〇のどこについて調べる?」と具体化する問いかけをしましょう。「動物」なら「好きな動物の食べるもの」「住んでいる場所」など、範囲を絞る手助けをします。
- ワークシートの活用: 「私の気になること」「その中で特に知りたいこと(問い)」「どうして知りたい?(理由)」といった項目を設けた簡単なワークシートを用意し、それに沿って考えを進めるサポートが有効です。
- 調べられる問いに変える:
- 「平和って何?」のような抽象的な問いは難しいため、「〇〇戦争が△△に与えた影響は?」のように、調べれば答えが見つかりやすい具体的な事象や関係性に焦点を当てるように促します。教員がいくつかの問いの例を提示し、生徒に選ばせるのも良い方法です。
ステップ2:情報収集への支援
- 多様な情報源を示す:
- 「調べるって、本だけじゃないんだよ。インターネットもあるし、詳しい人に聞いてみるのもいいんだよ」と伝え、生徒がアクセスしやすい方法を選べるようにします。学校司書と連携し、図書館の使い方を指導してもらうことも有効です。
- インターネット検索の基本を教える:
- 検索エンジンの使い方(検索窓にキーワードを入れること)から教えます。
- キーワードの選び方: 「知りたいことに関係する言葉をいくつか入れてみよう」「もっと詳しく知りたいなら、言葉を足してみよう(例: 『〇〇 原因』)」など、具体的な検索方法を一緒に考えます。よく使うキーワード(原因、影響、歴史、種類など)のリストを提示するのも良いでしょう。
- 信頼できる情報源の見分け方: ウェブサイトのアドレス(.go.jp, .ac.jp, .or.jp など)や、情報がいつ更新されたか、誰が書いた情報かなどを確認する大切さを伝えます。情報の正確性について、複数の情報源で確認すること(クロスチェック)の重要性も指導します。
- 情報収集ツールとしてのICT活用:
- インターネット検索だけでなく、学校図書館の蔵書検索システムや、教育機関が提供するデータベースの利用方法を教えることも、より質の高い情報にアクセスする手助けになります。
ステップ3:情報の整理・分析への支援
- 情報の読み解き方:
- 難しい文章を読むのが苦手な生徒には、短い段落ごとに区切って読んだり、重要なキーワードに線を引いたりする練習をします。分からない言葉があれば、すぐに調べる習慣をつけるように促しましょう。
- 一緒に資料を読み、「この中で一番大切なことは何だと思う?」「〇〇について書いてあるのはどこかな?」と具体的な問いかけをしながら、情報の取捨選択と要約のプロセスを一緒にたどります。
- 情報の整理方法を示す:
- 付箋活用: 集めた情報の断片を付箋に書き出し、テーマごとに関連する付箋を模造紙やホワイトボードに貼り付けて分類する方法は、視覚的に情報を整理できるため、多くの生徒に有効です。
- 情報整理シート: 事前に「〇〇について」「△△について」のように項目を立てたワークシートを用意し、そこに情報を書き込んでいく方法も、情報を分類する手助けになります。
- マインドマップ: 中央にテーマを置き、そこから放射状に枝を伸ばして関連情報を書き込んでいくマインドマップも、情報の関連性を視覚的に捉えるのに役立ちます。書き方を一緒に練習しましょう。
- 「写す」から「まとめる」へ:
- 資料を丸写ししている生徒には、「書いてあることを、自分の言葉で短くしてみよう」「この段落で言いたいことは、つまりこういうことかな?」と一緒に要約の練習をします。
- 集めた情報から、自分の問いに対する「答え」を見つけ出す視点を持つように促します。「集めた情報の中から、問いの答えになりそうな部分を選んでみよう」と具体的に指示します。
ステップ4:まとめ・表現への支援
- 構成のヒントを与える:
- 「初めに、なぜこのテーマを選んだか(動機)。次に、調べて分かったこと。最後に、そこから考えたことや感想、今後の課題、といった流れでまとめると分かりやすいよ」のように、基本的な構成例を示します。
- 目次や簡単なアウトラインを作成する練習を一緒にします。
- 表現方法の選択肢を示す:
- レポート、ポスター、模造紙、スライド(PowerPointやGoogle Slides)、発表など、多様な形式でのまとめ方・発表方法があることを伝え、生徒の得意な方法を選べるようにします。
- それぞれの形式の良い例と改善点を示し、分かりやすく伝えるための工夫(図やグラフ、写真の活用、文字の大きさ、色使いなど)を具体的に指導します。
- 書く・話すサポート:
- 文章を書くのが苦手な生徒には、箇条書きで書いてから文章にまとめる練習をします。
- 発表が苦手な生徒には、原稿を読み上げても良い、短い発表から始める、ペアやグループで発表するなど、ハードルを下げる工夫をします。発表練習に付き合ったり、フィードバックをしたりすることも大切です。
すべてのステップで共通する大切な視点
- プロセスを褒める: 結果だけでなく、「〇〇について調べようと思ったんだね、いいね!」「検索キーワードを自分で考えられたね、素晴らしい」「この情報、ちゃんと必要な部分を選べているよ」のように、調べるプロセスや努力、小さな「できた」に焦点を当てて具体的に褒めましょう。
- 個別具体的なフィードバック: 生徒がどこでつまずいているかを観察し、その生徒に合わせた具体的なアドバイスを行います。「もう少しテーマを絞ると、調べやすくなるかもしれないね」「このサイトの情報は少し難しいかな?他の情報源も見てみようか」「集めた情報を色分けしてみると、整理しやすいかもしれないよ」のように、次の一歩につながる具体的な声かけを心がけます。
- 相談しやすい雰囲気づくり: 「分からないことがあったら、いつでも聞いてね」という姿勢を日頃から示し、生徒が気軽に質問できる関係性を築くことが何よりも重要です。
まとめ
調べ学習は、現代社会で求められる情報活用能力や探究心を育む上で欠かせない学習活動です。生徒一人ひとりが持つ多様な学びのカタチを理解し、調べ学習の各ステップでつまずきやすいポイントに対して、今回ご紹介したような具体的なスモールステップでの支援を行うことで、生徒は「分からない」を乗り越え、「できた!」という成功体験を積み重ねることができます。
先生方が日々の実践の中で気づいた支援のアイデアや、生徒の成長につながった事例があれば、ぜひこの「学びのカタチ共有広場」で共有していただけると嬉しく思います。共に学び合い、多様な生徒たちの「自分で学ぶ力」を育んでいきましょう。