「先生、何て言いました?」を減らす!授業で活かせる指示の出し方と確認方法
授業中の「指示が伝わらない」悩み、ありませんか?
授業中に生徒に指示を出した際、「先生、何て言いましたか?」「もう一度言ってもらえますか?」と繰り返し聞かれること、あるいは指示通りに動けない生徒がいることに悩んだ経験はありませんでしょうか。特に多様な学習スタイルを持つ生徒が増える中で、これまでの一般的な指示の出し方だけでは、すべての生徒に適切に情報が伝わらない場面が増えているかもしれません。
生徒が指示を理解できない理由は様々です。聴覚からの情報処理が苦手、一度に複数の情報を処理するのが難しい、視覚的な情報がないと理解しにくいなど、生徒の特性や学習スタイルによって異なります。
この記事では、授業中の指示をより多くの生徒に分かりやすく伝えるための具体的な工夫や、指示が伝わったかを確認する方法について、現場で実践できるアイデアを中心に解説します。
なぜ指示が伝わりにくいのか?多様な学習スタイルとの関係
指示が伝わらない背景には、生徒の多様な学習スタイルが影響している場合があります。
- 聴覚優位な生徒: 耳で聞く情報で理解しやすい一方、板書や文字情報だけでは理解が進みにくいことがあります。
- 視覚優位な生徒: 目で見る情報(板書、資料、図、ジェスチャー)で理解しやすい一方、口頭での説明だけでは情報を取りこぼすことがあります。
- 一度に多くの情報処理が苦手な生徒: 長い指示や複数の手順を含む指示を一度に与えられると、混乱してしまうことがあります。
- 集中を持続するのが難しい生徒: 指示が出ている間に気が散ってしまい、最後まで聞き取れないことがあります。
- ワーキングメモリの容量が小さい生徒: 聞いた指示を一時的に覚えておくことが難しく、すぐに忘れてしまうことがあります。
これらの生徒の特性を理解した上で、指示の出し方を工夫することが、より多くの生徒にとって分かりやすい授業につながります。
すぐに試せる!指示の出し方の具体的な工夫
すべての生徒に指示を届けるために、以下の点を意識して指示を出してみましょう。
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指示の前に注意を引く:
- 指示を出す前に、「今から大切な連絡です」「一度手を止めて先生を見てください」など、生徒の注意をこちらに向ける言葉を発します。
- チャイムやハンドサインなど、合図を決めておくのも効果的です。
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指示は「短く」「具体的に」:
- 一度にたくさんの指示を詰め込まず、一つの動作や手順ごとに区切って指示します。
- 抽象的な言葉ではなく、「〜を□ページ開いてください」「△色で線を引いてください」のように、具体的な行動を示す言葉を使います。
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視覚情報を必ず加える:
- 口頭での指示だけでなく、必ず板書に書く、プリントやスライドに箇条書きで示す、関連する掲示を指差すなど、視覚的な情報とセットで指示を出します。
- 重要なキーワードには色をつけたり、囲んだりするのも効果的です。
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手順を明確にする:
- 複数の手順が必要な指示(例:「まず教科書を開いて、次に問題を読んで、それからノートに答えを書きましょう」)は、「ステップ1」「ステップ2」のように番号を振って示します。
- 図やイラストを用いて手順を示すのも有効です。
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ジェスチャーや表情を活用する:
- 指示の内容に合わせて、身振り手振りや表情を加えることで、言葉だけでは伝わりにくいニュアンスや重要度を伝えることができます。
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静かな環境を作る:
- 指示を出す際は、生徒が話し込んでいるなど、騒がしい状態を避け、全員が聞き取りやすい静かな環境を作ってから始めます。
指示が伝わったかを確認する方法
指示を出すだけでなく、それが生徒に正しく伝わったかを確認することも非常に重要です。
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全体への簡単な問いかけ:
- 指示を出した後、「〜という指示でしたね、大丈夫ですか?」など、簡単な問いかけをして、生徒の反応を見ます。
- 「できた人は挙手してください」など、簡単なアクションを求めるのも良いでしょう。
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生徒に復唱・説明してもらう:
- 特定の生徒やグループに、「今の指示をもう一度言ってみてくれる?」「先生が何をやってほしいか説明してみて?」と尋ねてみます。これにより、どの部分で理解につまずいているかが分かります。
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「確認係」を作る(グループ活動など):
- グループ活動の際、指示の伝達や確認を担当する生徒を決め、必要に応じて教師がサポートします。
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簡易チェックシートの活用:
- 複数の手順がある指示の場合、手順が書かれた簡単なチェックシートを配布し、できた項目にチェックを入れてもらうようにします。生徒自身が指示内容を視覚的に確認でき、教師も進捗を把握しやすくなります。
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机間指導での声かけ:
- 指示を出した後、すぐに机間指導を行い、生徒の様子を観察します。指示通りに取り掛かれているか、困っている生徒はいないかを確認し、必要に応じて個別に声をかけます。
実践事例:視覚情報と段階的指示を組み合わせる
ある中学校の数学の授業での事例です。図形の課題に取り組む際、口頭で「この問題を解くには、まず教科書のp.XXにある公式を思い出して、次にこの図に補助線を引いて、それから計算を進めてください」と指示を出しても、一部の生徒はどこから手をつければ良いか分からず固まってしまうことがありました。
そこで、以下のように工夫しました。
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指示の構造化と視覚化:
- 板書に以下のように書き出しました。
```
今日の課題の進め方
### 1. 公式を確認する
- 教科書p.XXの公式を思い出そう! (〇で囲む)
2. 図に補助線を引く
- プリントの図に、〇〇のように補助線を引こう! (簡単な図を添える)
3. 計算して答えを出す
- ノートに計算を書き出そう ```
- 口頭での指示も、この板書の項目ごとに区切って行いました。
- 公式や補助線の引き方についても、関連する部分を指差したり、簡単なジェスチャーを加えたりしました。
- 板書に以下のように書き出しました。
```
今日の課題の進め方
### 1. 公式を確認する
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確認シートの配布:
- 上記の手順を書いた小さな確認シートをプリントと一緒に配布し、各手順が終わったら自分でチェックを入れるように促しました。
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机間指導での個別確認:
- 指示後、すぐに教室内を回り、生徒一人ひとりの手元を確認。「ステップ1はできたかな?」「補助線はどこに引いた?」などと声をかけ、つまずいている生徒にはヒントを与えたり、もう一度一緒に手順を確認したりしました。
この結果、「次に何をすれば良いか分からない」と立ち止まる生徒が減り、自分のペースで課題に取り組める生徒が増えました。特に視覚からの情報や手順が明確になっていることが、生徒にとって大きな助けとなったようです。
まとめ:小さな工夫の積み重ねが大きな差に
授業中の指示が生徒に伝わりに見くいことは、多くの先生方が経験する悩みです。しかし、指示の出し方に少しの工夫を加えること、そして指示が伝わったかを確認するプロセスを取り入れることで、状況は大きく改善する可能性があります。
今回ご紹介したアイデアは、どれもすぐにでも授業で試せるものばかりです。すべての生徒の学習スタイルに対応するのは難しいことですが、視覚的な支援を増やしたり、指示を短く区切ったりするなどの小さな積み重ねが、生徒たちの「分かった!」「できた!」につながります。
ぜひ、明日の授業から一つでも試してみてください。そして、うまくいった事例や、逆に難しかったことなども、この「学びのカタチ共有広場」で共有していただけると嬉しいです。皆さんの経験が、きっと他の誰かのヒントになります。
多様な学びを支えるための工夫について、これからも一緒に学びを深めていきましょう。