視覚優位?聴覚優位?多様な生徒が「分かった!」となるプリント・教材作成の工夫
プリントや教材、伝わっていますか?多様な学びへの配慮
日々の授業準備の中で、生徒に配布するプリントや使用する教材は欠かせないものですね。時間をかけて作成したものが、すべての生徒に意図した通りに伝わっているか、時々不安に感じることはありませんでしょうか。特に、様々な学習スタイルを持つ生徒がいる中で、「この子はどこでつまずいているのだろう」「どうすればもっと分かりやすく伝えられるだろう」と悩むこともあるかもしれません。
生徒たちの学びの形は一人ひとり異なります。情報を得る際に、目で見て理解しやすい子(視覚優位)、耳で聞いて理解しやすい子(聴覚優位)、実際に体を動かしたり触ったりすることで理解が深まる子(触覚・運動感覚優位)など、様々なタイプがあります。また、特定の情報に注目するのが得意な子、全体像を捉えるのが得意な子など、認知特性も多様です。
本記事では、これらの多様な学びのスタイルに配慮した、プリントや教材を作成する上でのちょっとした工夫をご紹介します。すぐに授業で試せるアイデアを中心にお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
多様な学習スタイルに寄り添う!プリント・教材作成の具体例
すべての生徒にとって「分かりやすい」教材を目指すことは、簡単なことではありません。しかし、少しの工夫で、多くの生徒の理解を助けることができます。ここでは、具体的な作成のヒントをいくつかご紹介します。
1. 見やすさを追求したレイアウトとデザイン
視覚からの情報が多いプリントでは、第一印象や情報の整理が重要です。
- 適切な余白と行間: 文字が詰まりすぎていると読む気力が削がれたり、どこを読んでいるか分からなくなったりします。十分な余白と適切な行間を設けることで、すっきりと見やすい印象になります。
- フォントと文字サイズ: 教科書などで使われるような、癖のないユニバーサルデザインフォントを選びましょう。文字サイズは、小学部向けほど大きくする必要はありませんが、小さすぎないように注意が必要です。タイトルや見出しは本文より大きく太字にするなど、階層を分かりやすくします。
- 箇条書きや番号付きリストの活用: 情報を羅列するのではなく、箇条書きや番号付きリストを使用することで、要素が整理され、重要な点が把握しやすくなります。
- 枠線や囲み線: 特に重要な情報や定義、注意書きなどは、枠線や囲み線で囲むことで目立たせることができます。
- 図やイラスト、グラフの活用: 文章だけでは伝わりにくい内容も、視覚的な要素を加えることで理解が深まります。複雑な概念を図解したり、手順をイラストで示したりするのも有効です。
- 色使いの配慮: 色を使う場合は、カラーユニバーサルデザインに配慮し、多くの人が見分けやすい配色を選びましょう。また、白黒コピーした場合にどうなるかも考慮が必要です。重要なキーワードをマーカー代わりに色付けする場合も、太字や下線と併用すると、白黒でも区別しやすくなります。
2. 内容の整理と情報の強調
伝えたい情報が明確に伝わるように、内容を整理し、必要な情報を強調します。
- 明確な見出しと小見出し: 何についての情報が書かれているのか、すぐに分かるように見出しをつけます。大きなテーマの中に小見出しを設けることで、全体の構成が把握しやすくなります。
- キーワードの強調: 太字や下線、色文字(白黒コピーを考慮)などを使って、重要な語句やキーワードを強調します。これにより、視覚的に重要な情報が飛び込んできます。
- 情報の絞り込み: 一つのプリントに詰め込みすぎず、本当に伝えたい情報に絞り込みましょう。情報量が多いと、どこが重要か分からなくなってしまいます。
- ステップ分け: 手順や工程を説明する場合は、一つずつのステップを明確に分け、番号を振るなどして順序を分かりやすく示します。
3. 言語表現と補足情報の工夫
言葉の選び方や、付加的な情報も理解を助ける上で重要です。
- 平易な言葉遣いと具体例: 難しい専門用語は避け、中学生が理解できる平易な言葉を選びましょう。抽象的な説明だけでなく、具体的な例を挙げることでイメージしやすくなります。
- 比喩や擬音語・擬態語: 内容によっては、分かりやすい比喩を使ったり、動きや状態を擬音語・擬態語で表現したりすることが、特に聴覚優位の生徒やイメージを掴むのが苦手な生徒の理解を助ける場合があります。
- QRコードの活用: 関連する動画(実験映像、解説アニメーションなど)や音声資料、ウェブサイトへのリンクをQRコードでプリントに印刷しておくと、生徒はスマホなどで追加情報を得ることができます。これは、特に視覚・聴覚優位の生徒や、自宅で自分のペースで学びたい生徒に有効です。
- 触覚・運動感覚への配慮: プリントの質感を工夫する(重要な箇所を厚紙にするなど)や、内容に関連する簡単な折り紙や工作のヒントを載せるなど、触覚や運動感覚を刺激する要素を少し加えることも、一部の生徒には有効です。
実践する上でのポイント
これらの工夫を一度にすべて取り入れる必要はありません。まずは、自分が担当する教科や生徒たちの様子を見て、一つか二つ試しやすいものから始めてみましょう。
- 生徒の反応を見る: 実際に工夫したプリントを使ってみて、生徒たちの様子を観察したり、感想を聞いたりすることが大切です。「ここが分かりやすかった」「ここが少し難しかった」といった声は、次の改善につながります。
- 他の教員と共有する: 作成したプリントを他の先生に見てもらったり、試した工夫について情報交換したりするのも良い方法です。自分一人では気づかなかった視点を得られることがあります。
- 完璧を目指さない: 最初から完璧な教材を作るのは難しいことです。試行錯誤を繰り返しながら、生徒たちの理解が深まるような教材に少しずつ近づけていく姿勢が大切です。
まとめ
多様な学習スタイルを持つ生徒への対応は、教員にとって尽きない課題の一つです。しかし、日々の授業で使うプリントや教材の作成に少し工夫を凝らすだけでも、生徒たちの「分かった!」という瞬間を増やす手助けになるはずです。
ここでご紹介したアイデアが、皆さんの教材研究の一助となれば幸いです。学びのカタチは多様だからこそ、教員も多様なアプローチを試みることが重要だと考えています。この広場を通して、皆さんの実践事例や悩み、そしてそこから得られた学びを共有し合い、ともに成長していければ嬉しく思います。