どうする?授業中の離席・立ち歩きに悩んだ時に試したい3つの声かけと環境設定
授業中の離席、立ち歩き…一人で抱え込まず、試せることから始めましょう
授業中に席を離れてしまったり、教室内を立ち歩いたりする生徒への対応は、多くの先生方が悩む課題の一つではないでしょうか。特に若手の先生にとっては、「どう声をかけたら良いのだろう」「他の生徒への影響は?」など、対応に迷う場面も多いかと思います。
生徒が席を離れる行動の背景には、様々な理由が考えられます。単に飽きてしまったというだけでなく、授業内容についていけない、逆に簡単すぎる、特定の学習スタイルに合わない、聴覚や視覚からの刺激に敏感である、不安を感じている、衝動性を抑えるのが難しいなど、多様な要因が絡み合っている場合があります。
このような状況に直面したとき、「何とかしなければ」と焦りを感じることもあるかもしれませんが、まずは落ち着いて、生徒の様子を観察し、様々な可能性に思いを巡らせてみることが大切です。そして、いくつか試せる具体的なアプローチを知っておくことで、少しでも心に余裕が生まれるかもしれません。
この記事では、授業中の離席や立ち歩きに悩んだときに試していただきたい、具体的な「声かけ」と「環境設定」のヒント、そして「連携」の重要性についてお伝えします。すぐに全てを実践することは難しくても、一つでも二つでも、今日の授業や明日の準備で試せるアイデアが見つかれば幸いです。
試したい3つのアプローチ:声かけ、環境設定、そして連携
授業中の離席・立ち歩きへの対応は、単にその場で行動を止めさせるだけでなく、生徒が落ち着いて授業に参加できるような支援へと繋げていく視点が重要です。ここでは、三つの具体的なアプローチをご紹介します。
1. 具体的な「声かけ」のヒント
咄嗟の状況で、どのように声をかけたら良いか迷うことはよくあります。頭ごなしに「座りなさい!」と指示するだけでなく、生徒の状況や関係性に応じて、様々な声かけを試してみましょう。
- 予防的な声かけ:
- 授業開始前や内容が変わる節目に、「今日の授業で特に大切なのは〇〇だよ」「この部分、一緒に頑張ろうね」など、生徒の注意を向けやすい言葉をかける。
- 特定の生徒には、「分からなくなったら机の上のサインカードを見せてね」「少し休憩したくなったら、静かに席を立って後ろのスペースに行っても良い時間があるよ」など、事前の約束や代替行動を示す。
- 離席しかけた、または離席した直後の声かけ:
- 生徒と目を合わせ、軽くうなずく、近くに立って見守るなどの非言語的なメッセージを送る。
- 静かに近づき、短い言葉で促す。「〇〇さん、席に戻れるかな?」「ここまで一緒にやってみようか」。
- 感情的にならず、落ち着いたトーンで話しかける。「どうしたの?困っていることはある?」「この問題、一緒に考えてみようか」。
- 生徒が何かに気を取られている場合、「今、授業は〇〇をしている時間だよ」と静かに伝える。
- ポイント:
- 指示は短く、具体的に。「座りなさい」だけでなく、「席に戻ってノートを開こうね」のように、次にしてほしい行動を明確にする。
- 否定的な言葉よりも、肯定的な言葉や選択肢を含む声かけを心がける。「〜するな」よりも「〜しようね」「〜しても良いよ」。
- 他の生徒に聞かれないように、個人的に声をかける配慮も重要です。
2. 授業環境・教室環境の「設定」のヒント
環境を少し工夫することで、生徒が落ち着いて過ごせるようになる場合があります。大がかりな変更が難しくても、すぐに試せるものから取り入れてみましょう。
- 座席配置の工夫:
- 教室の出入り口から遠い場所や、窓際・廊下側などの刺激が少ない場所に席を配置する。
- 先生の机の近くや、落ち着いて授業に取り組む生徒の近くに席を配置する。
- 特定の生徒のために、パーティションなどで視覚的な刺激を減らせるスペースを用意する(教室内の「クールダウンコーナー」や「集中ブース」のようなイメージ)。
- 授業中の工夫:
- 授業の流れや時間配分を板書したり、タイマーを使ったりして、生徒が見通しを持てるようにする。
- 集中が途切れる前に、短い休憩や活動の切り替え(例:軽い体操、隣の人との意見交換、短い動画視聴)を入れる。
- 視覚的に分かりやすい教材(図やイラストが多いプリント、色分けされた板書)を取り入れる。
- 生徒が主体的に取り組める活動(簡単な作業、発表の機会、グループワーク)を増やす。
- その他:
- 特定の生徒に、授業中に立ち歩かなくてもできる役割(例:先生の手伝い、資料配り、簡単な掲示物の貼り替え)を与える。
- 教室の特定の場所に、気分転換やクールダウンができるスペース(クッションを置くなど)を設ける。
3. 校内での「連携」を大切に
授業中の離席や立ち歩きといった行動は、特定の教科や特定の時間だけでなく、様々な場面で起こりうる場合があります。生徒へのより一貫した、きめ細やかな支援のためには、校内の他の先生方との連携が不可欠です。
- 情報共有:
- 授業中の生徒の様子や、試した声かけ、環境設定とその結果などを記録し、学年の先生方や管理職、特別支援コーディネーター、養護教諭と共有する。
- 生徒に関する情報は、多角的な視点(他の教科での様子、休み時間の様子、家庭での様子など)で集めることで、行動の背景理解に繋がることがあります。
- 相談と協働:
- 自分一人で抱え込まず、同僚や先輩の先生に相談する。同じような経験を持つ先生から、具体的なアドバイスが得られることも多いです。
- 特別支援教育の専門家(特別支援コーディネーターなど)や、生徒の心身の状況に詳しい養護教諭から、より専門的な視点からのアドバイスや支援方法の提案を受ける。
- 複数の先生で協力して、共通の目標設定や支援計画を作成・実行する。
焦らず、一つずつ、生徒と共に
授業中の離席や立ち歩きへの対応に、「これをすれば必ず解決する」という魔法のような方法は残念ながらありません。生徒一人ひとりの個性や状況によって、効果的なアプローチは異なります。
大切なのは、生徒の行動の背景にある理由を理解しようと努め、様々な声かけや環境設定のアイデアを試しながら、その生徒にとって何が最も効果的かを見つけていくプロセスです。時にはうまくいかないこともあるかもしれませんが、試行錯誤そのものが、生徒との関係を深め、より良い支援方法を見つけるための貴重な経験となります。
そして、このプロセスを一人で抱え込む必要はありません。同じように悩む同僚の先生と話をしたり、「学びのカタチ共有広場」で他の先生方の経験談を参考にしたりすることも、大きな助けとなるはずです。
生徒が安心して授業に参加し、「ここにいたいな」と思える教室づくりを目指して、試せることから、生徒と共に一歩ずつ進んでいきましょう。応援しています。