学びのカタチ共有広場

「結局、何が大事?」が分からない生徒へ:抽象的な概念や全体像を伝える具体的な工夫

Tags: 抽象概念, 理解支援, 指導法, 教材作成, 学習支援

多様な学習スタイルを持つ生徒の中には、抽象的な概念や物事の全体像を捉えることに難しさを感じている場合があります。「先生の話を聞いているのに、結局何が一番大事なのか分からない」「具体例は理解できても、一般的な定義になると分からなくなる」といった様子の生徒はいませんか。

このような生徒は、授業内容の核心部分や科目間の関連性を見失いやすく、学習全体でつまずきを感じてしまうことがあります。教員としても、「どこでつまずいているのか特定しにくい」「どのように説明すれば理解してもらえるか分からない」といった悩みに直面することも少なくないでしょう。

この記事では、抽象的な概念や全体像の理解に難しさを抱える生徒への具体的な支援アイデアをご紹介します。日々の授業で少し工夫することで、生徒たちの「分かった!」を増やしていくヒントになれば幸いです。

なぜ抽象的な概念の理解が難しいのか

抽象的な概念や全体像の理解が難しい背景には、いくつかの要因が考えられます。特定の認知特性、例えば一度に処理できる情報量(ワーキングメモリ)の限界、情報を順序立てて処理することの難しさ、視覚的・具体的な情報の方が理解しやすいといった特性などが影響している場合があります。

これらの特性は、決して「理解力がない」ということではなく、情報処理のスタイルが異なるだけです。具体的な困り事としては、以下のようなものが見られます。

こうした生徒たちにとって、単に「説明を繰り返す」だけでは、かえって混乱を招くこともあります。生徒の情報処理スタイルに合わせたアプローチを試みることが大切です。

抽象的な概念や全体像を伝える具体的な工夫

抽象的な概念や全体像をより分かりやすく伝えるために、授業や教材作成で試せる具体的なアイデアをいくつかご紹介します。

1. 視覚的なサポートを最大限に活用する

目で見て理解できる情報は、抽象的な概念を結びつける手助けになります。

2. 言葉による説明を工夫する

口頭での説明も、少しの工夫で理解を深めることができます。

3. 活動を通して理解を促す

生徒自身がアウトプットする活動は、理解の定着に繋がります。

4. 理解度の確認とフィードバックを丁寧に行う

生徒がどこでつまずいているのか、どこまで理解できているのかを確認することが大切です。

教員の悩みへの対応・心構え

様々な工夫をしても、すぐに全ての生徒が同じように理解できるようになるわけではありません。焦らず、生徒一人ひとりの反応を観察しながら、根気強く様々なアプローチを試していくことが重要です。

もし、「どうすればいいか分からない」「自分の指導に行き詰まりを感じる」といった悩みがある場合は、一人で抱え込まずに他の先生に相談してみましょう。経験のある先生の事例を聞いたり、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーといった専門家からアドバイスをもらったりすることも有効です。

また、生徒自身に「どうしたらもっと分かりやすいか」「どんな方法だと理解しやすいか」を一緒に考えてもらうことも、生徒の自己理解を促し、主体的な学びを支援することにつながります。

まとめ

抽象的な概念や全体像の理解に難しさを抱える生徒への支援は、特別なことではなく、多様な生徒がいる教室において、より分かりやすい授業を目指すための工夫の一つです。視覚的なサポート、言葉による説明の工夫、活動を通じた理解促進、そして丁寧な確認とフィードバックを組み合わせることで、多くの生徒が学びの「なるほど!」を体験できるようになります。

全ての生徒が安心して学びにアクセスできる教室を目指し、ぜひ今日ご紹介したアイデアの中から、ご自身のクラスで試せそうなものを取り入れてみてください。そして、この「学びのカタチ共有広場」で、皆さんの経験や工夫をぜひ共有していただけると嬉しいです。