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生徒の「困った」を減らす!学びをサポートする文房具・ツールの選び方と活用アイデア

Tags: 学習支援ツール, 文房具, 個別支援, 実践事例, 多様な学習スタイル

はじめに

日々の教育活動の中で、生徒一人ひとりの学びの様子を観察していると、「この子は、この教材だと少しやりにくそうだな」「他の子と比べて、この作業に時間がかかっているな」と感じることがあるかもしれません。学習の進度や理解度だけでなく、学習に取り組む上での「手段」や「方法」にも、生徒によって多様なスタイルや特性があります。

特に、書字が苦手、音や光に敏感、集中を持続させるのが難しい、といった特性を持つ生徒にとって、一般的な文房具や学習ツールが、知らず知らずのうちに学びのハードルになっている場合があります。

この記事では、多様な学習スタイルを持つ生徒たちの「困った」を少しでも減らし、主体的な学びをサポートするための、文房具やツールの選び方と具体的な活用アイデアをご紹介します。高価な特別支援教材だけでなく、身近にあるものや、少しの工夫で取り入れられるアイデアを中心にお伝えします。

なぜ、学習ツール・文房具の工夫が大切なのか

生徒の学習における困難は、必ずしも意欲や能力の問題だけではありません。使用しているツールが、その生徒の感覚特性や身体的な特性に合っていないために、本来の力を発揮できていない場合があるのです。

例えば、

これらの困難に対して、生徒に合ったツールや文房具を提供することは、学習内容に集中するための基盤を整えることにつながります。生徒が「できた!」という成功体験を積み重ねる上でも、ツールのサポートは有効な手段の一つと言えるでしょう。

多様な学習スタイルに対応する文房具・ツール例と活用アイデア

ここでは、具体的な文房具やツールの種類と、学校現場でどのように活用できるかのアイデアをご紹介します。

1. 書字・筆記をサポートするツール

「書く」ことに困難を感じる生徒のために、様々な工夫がされた文房具があります。

2. 見る・読むをサポートするツール

視覚的な情報処理に特性がある生徒のために、見やすさを調整できるツールがあります。

3. 聞く・集中をサポートするツール

聴覚過敏や、周囲の音に気が散りやすい生徒のために、音環境を調整するツールがあります。

4. 整理・計画をサポートするツール

段取りを組むことや、持ち物・課題の管理が苦手な生徒のために、視覚的に分かりやすいツールがあります。

生徒へのツールの提案と導入のポイント

新しいツールや文房具を生徒に提案する際には、以下の点を意識することが大切です。

  1. 生徒の困り感を共有する: まず、「〜が少しやりにくいかな?」「これで困っていることはある?」など、生徒自身の声に耳を傾けます。教員が一方的に「これを使った方がいい」と押し付けるのではなく、生徒が自分の困り感を自覚し、その解決のためにツールを「使ってみようかな」と思えるように促します。
  2. 複数の選択肢を提示する: 可能であれば、いくつかの種類のツールを提示し、生徒自身に実際に触れて試してもらい、最も使いやすいと感じるものを選ばせます。好みや感覚は生徒によって異なるため、「これなら使えそう」という生徒の感覚を大切にすることが重要です。
  3. 試す機会を設ける: いきなり本格的に使用するのではなく、「まずは今日の授業中だけ使ってみようか」「この課題だけ試してみよう」など、短い時間や特定の場面で試用する機会を設けます。
  4. 使用感をフィードバックしてもらう: 使ってみた感想を生徒に聞きます。「どうだった?」「使いやすかった?」「何か困ったことはなかった?」など、率直な意見を聞き、必要であれば別のツールを試したり、使い方を調整したりします。
  5. 周囲の理解と配慮: 特定のツールを使用する生徒がいる場合、他の生徒に簡単な説明(例: 「このツールを使うと、もっと集中して学習できるようになるんだよ」など)を行い、理解と協力を促すことも検討します。ただし、生徒のプライバシーに関わることなので、生徒や保護者の同意を得て慎重に行う必要があります。

まとめ

多様な学習スタイルを持つ生徒への支援は、特別なことばかりではありません。日々の授業で使用する文房具や学習ツールを、生徒一人ひとりの特性に合わせて少し工夫するだけでも、学びやすさは大きく変わる可能性があります。

今回ご紹介したアイデアはほんの一例です。生徒の様子を丁寧に観察し、「この子にとって、何が学びのハードルになっているのだろう?」と考えを巡らせることから始まります。そして、「これなら試せるかも」というアイデアがあれば、ぜひ生徒と一緒に試してみてください。

すぐに効果が出なくても、試行錯誤のプロセスそのものが、生徒が自分の「学びのカタチ」に気づき、自分に合った方法を見つけていく大切なステップとなります。他の先生方とも情報交換をしながら、生徒たちの「できた!」を増やすサポートを一緒に考えていきましょう。