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感情の波が大きい生徒へ:不安定さを安心に変える具体的な声かけと対応

Tags: 生徒支援, 感情コントロール, 声かけ, 発達特性, 教室環境

はじめに

教員の皆様、日々の教育活動、お疲れ様です。

担任する生徒の中には、ちょっとしたことで感情が不安定になったり、急に落ち着きをなくしたりするなど、感情の波が大きい様子の生徒への対応に難しさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。どのように声をかけたら良いのか、授業中や休み時間にどう接すれば良いのか、対応に迷う場面も少なくないかと思います。

この記事では、感情の波が大きい生徒が少しでも安心して過ごせるよう、具体的な声かけや接し方、環境づくりについて、現場で実践できるアイデアをご紹介します。

なぜ感情の波が大きくなるのか

生徒の感情の波が大きい背景には、様々な要因が考えられます。

これらの要因が複雑に絡み合っている場合も少なくありません。大切なのは、その生徒の感情的な反応を頭ごなしに否定するのではなく、「何か理由があるのかもしれない」という視点を持つことです。

不安定な生徒への具体的な「声かけ」のポイント

感情が不安定になっている生徒への声かけは、その後の状況を大きく左右することがあります。以下のような点を意識してみてはいかがでしょうか。

具体的な「接し方・対応」のポイント

声かけと合わせて、日頃からの接し方や環境づくりも重要です。

支援事例:休み時間に感情が不安定になったAさんのケース

休み時間、急に泣き出してしまったAさん(中学1年生)の事例です。

休憩時間中に他の生徒とのちょっとしたトラブルがあり、感情的に不安定になってしまいました。周囲の生徒もどうしたら良いか戸惑っている様子でした。

【教員の対応】

  1. まず落ち着いた声で声をかける: 騒がしい場所から少し離れた静かな場所に優しく誘導し、「どうしたの?大丈夫だよ、先生が聞くからね」と寄り添いました。
  2. 感情を言語化する手伝い: Aさんが泣きながらも言葉にならない様子だったので、「〇〇さんにこんなことを言われて、すごく嫌な気持ちになったんだね。悔しかったね」と、本人の様子や状況から感情を推測し、代弁しました。Aさんは小さく頷き、少し落ち着きを取り戻しました。
  3. 深呼吸を促す: 「大丈夫。ゆっくり息を吸って、吐いてみようか」と、教員も一緒に深呼吸をしました。
  4. クールダウンの場所へ誘導: 事前にAさんと決めていた「困ったときに落ち着ける場所(図書室の一角)」へ行くことを提案し、付き添いました。
  5. 落ち着いてから状況を確認: 図書室でしばらく過ごし、落ち着いてから、「さっき何があったか、先生に話せるかな?」と改めて状況を聞きました。本人の気持ちを丁寧に聞き取り、「それは辛かったね。でも、自分の気持ちを先生に話してくれてありがとう」と伝えました。
  6. 今後どうするか一緒に考える: その日の状況を踏まえ、「次に同じようなことがあったら、まずどうしようか?」とAさんと一緒に考え、「先生にすぐ伝えに来る」「一度その場から離れてみる」といった対応策を改めて確認しました。

この事例では、感情を否定せず受け止めること、具体的な行動(誘導、深呼吸、場所移動)を促すこと、そして事前に生徒と対応策を共有しておくことの有効性が示されました。

まとめ

感情の波が大きい生徒への対応は、教員にとって大きなエネルギーを要する場合があります。しかし、生徒が感情のコントロールに難しさを抱えている背景を理解し、具体的な声かけや安心できる環境づくりを積み重ねることで、生徒の不安定さを少しずつ安心に変えていくことが可能です。

「こうすれば完璧」という魔法のような方法はありませんが、一人ひとりの生徒の特性やその時の状況に合わせて、様々なアプローチを試していくことが大切です。そして何よりも、先生一人で抱え込まず、学校内外の様々な専門家や保護者の方と連携し、チームでサポートしていくことを忘れないでください。

この情報が、先生方の明日からの実践に少しでもお役に立てれば幸いです。