「今、何やってるの?」を減らす!集中が続かない生徒への具体的なアプローチ
授業中の集中が続かない生徒への対応に悩んでいませんか?
中学校の先生方の多くが、授業中に生徒の集中力が続かず、対応に悩む経験をお持ちかと思います。「今、何をやっている時間かな?」「大丈夫?」といった声かけをしても、なかなか状況が改善しないことも少なくありません。
多様な学習スタイルを持つ生徒にとって、一律の授業形式や指導だけでは集中を維持するのが難しい場合があります。生徒の行動の背景には、学習スタイル、発達特性、環境要因など、様々な理由が隠されている可能性があります。
この記事では、授業中に集中が続きにくい生徒への理解を深め、日々の指導で「すぐに試せる」具体的な声かけや環境設定の工夫についてご紹介します。特別な知識や設備がなくても実践できるアイデアを中心にお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ集中が続かないのか?背景にある可能性を探る
生徒が授業中に集中できない理由は一つではありません。多様な背景が考えられます。
- 刺激の感じ方: 視覚や聴覚からの刺激に敏感、あるいは逆に特定の刺激がないと注意を向けにくいなど、感覚の特性によるもの。
- 注意の特性: 興味のあることには深く集中できるが、それ以外には注意を向け続けるのが難しい、複数の情報があると混乱するなど、注意機能の特性によるもの。
- 学習スタイルとの不一致: 先生の話を聞くだけでは理解しにくく、視覚的な情報や体を動かすことが必要など、授業形式と自身の得意な学び方が合わないことによるもの。
- 環境: 教室の騒がしさ、隣の生徒の動き、光の刺激などが気になってしまう。
- 体調や情緒: 睡眠不足、空腹、不安など、一時的な体調や心の状態によるもの。
- 課題の難易度: 課題が難しすぎる、あるいは簡単すぎて退屈してしまう。
これらの背景をすべて把握するのは難しいですが、「この生徒はどんな時に集中できていそうか?」「どんな時に集中が途切れやすいか?」といった視点で日々の様子を観察することで、対応のヒントが見つかることがあります。
すぐに試せる!授業中の「具体的な声かけ」アイデア
生徒の集中が途切れがちな時に、問い詰めるのではなく、生徒を前向きな行動に誘導するための具体的な声かけをいくつかご紹介します。
- 肯定的な声かけから入る: 「〇〇さん、静かに座れていますね。次は△△をやってみましょうか。」(できている部分を認め、次の行動を促す)
- 具体的な指示を短く: 「教科書の○ページを開いて、□を線で囲んでみよう。」(複数の指示を一度にせず、分解して伝える)
- 視覚情報とセットで伝える: 指示を出す際に、黒板に書く、ワークシートを指差す、ジェスチャーをつけるなど、耳だけでなく目からも情報が入るようにする。
- 選択肢を提示する: 「この問題を先にやる? それともこっちから始めてみる?」または「立ち歩きたくなったら、まず先生に合図してみる?」など、生徒に小さな選択の機会を与える。
- 短い休憩を提案: 「ちょっと疲れたかな? 1分だけ休憩して、また始めてみよう。」(集中が途切れる前に声をかけられるとより効果的です)
- タスクの区切りを示す: 「このページが終わったら、次の活動に移りますよ。」(見通しを持たせる)
- 小さな達成を認める: 「ここまでできたね、すごい! あと少しだよ、頑張ろう。」(過程を評価する)
声かけの際は、落ち着いたトーンで、生徒の目を見て話すことを意識しましょう。また、全体に向けた指示の後に、個別に必要な生徒へ再度そっと声をかけるといった工夫も有効です。
教室環境を調整する「ちょっとした工夫」
大がかりな改修は難しくても、座席配置や手元に置くものなどを少し工夫するだけで、集中しやすい環境を作れることがあります。
- 座席の工夫:
- 気が散るもの(窓の外の景色、廊下、他の生徒の動きなど)が視界に入りにくい場所に座席を配置する。
- 教員や黒板がよく見える、アクセスしやすい席にする。
- 集中しやすい生徒の隣や近くに配置する。
- 一時的に個別スペース(壁際など)を利用できるようにする。
- 手元の工夫:
- 不必要なものが視界に入らないように、机の上を整理整頓するサポートをする。
- 手持ち無沙汰な生徒のために、授業内容に関係ない小さなクリップやゴムなど、手の中でそっと触っていられるものを許可する(他の生徒の邪魔にならないものに限る)。
- 教科書を読む際に、定規や指で追うことを許可する。
- 物理的な環境:
- 机の間に簡単な衝立やパーティションを置く(周囲の目が気になる生徒、視覚刺激に弱い生徒に有効な場合があります)。
- ざわつきが気になる生徒のために、イヤーマフ(聴覚過敏がある生徒に有効な場合があります)の使用を許可する。
- じっと座っているのが難しい生徒のために、立って作業できるスペースを一時的に設ける。
これらの環境調整は、特定の生徒だけでなく、多くの生徒にとって集中しやすい環境に繋がる可能性もあります。ただし、導入する際には、特定の生徒への配慮であることを他の生徒に理解してもらうための丁寧な説明が必要になる場合もあります。
試行錯誤を受け入れる姿勢が大切
多様な学習スタイルを持つ生徒への対応には、一つの「正解」があるわけではありません。今回ご紹介したアイデアも、ある生徒には有効でも、別の生徒にはあまり効果がないということも起こりえます。大切なのは、生徒一人ひとりの様子をよく観察し、様々な方法を試しながら、その生徒にとって最も集中しやすい方法を一緒に探していく姿勢です。
上手くいかないことがあっても、それは失敗ではなく、その生徒には合わなかったという大切な情報になります。一人で抱え込まず、同僚の先生方やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターなど、学校内外の専門家と相談しながら進めていくことをお勧めします。
この記事が、日々の生徒支援の一助となれば幸いです。